|
|
Chapter2
アトリエ・ビザビ
ガラスアーティスト 若林 茂人さん、若林 悠子さん
その2『様々な加工法』
|
ステンドグラス、積層ガラス、エッチンググラス、ライティングオブジェ、ミックスメディアアートワークなどなど、とにかくガラスで何でも創造してしまうアトリエビザビ主宰、若林 茂人さん、若林 悠子さん。
お二人の素顔に迫ってみましょう♪
|
WS:若林 茂人さん
WY:若林 悠子さん
R:インタビュアー・辻量太(ATREIL DESSIN)
R;ホームページに「I LOVE MAC」ってあったんですけど、デザインはMACで? 何か思い入れがあるんですか?(以下参照)
http://www.atelier-vis-a-vis.com/Pages/about_us/who/who_e.html
WS:そうそう。一応、何もね、なかったもんだから、入れといたのね(笑)。削除したのがあったんだよね(笑)。I LOVEなんとかって入れたんだけど…(笑)。
WY:「I LOVE MY FAMIRY」とかあったんだけど、それはちょっとやめようって(笑)。
R:「ビザビ」っていう名前の由来は何ですか?
WS:「パートナー」だとか、「対座して座る」、「向かい合って」…とかっていう。
R:そういう、お客様とコミュニケーションを大事にしようっていう…?
WS:そうですね。まあ、「仲間」みたいな感じで。
R:難しい、頭を悩ませる注文っていうのは?
WY:頭を悩ませる注文ってあんまりないよね?
WS:頭を悩ませる注文じゃなくって、頭を悩ませるひとがいるだけ(笑)。
WY:結局ぐるーっと回って最初に言ったのに戻ってきても平然としてるから(笑)。「そーか、やっぱり俺もそれが良かったと思うんだよ」って最初に決めてくださいよっていう…
WS:話はあんまりね。うーん、何とか解決できるんだけどね。人間関係が非常に難しいよね。
WY:他の方でしたら、こういう形でどうでしょうかって…。例えば、あそこにあるステンドグラスなんかも、窯で、炉で作ってあるんですけど、これもあるガラスじゃなくって、主人が考えた型を作って、あそこに立ってますよね、あの白い石膏の。ああゆう型を作って、わざわざこの、白い透明感のあるガラスを砕いて溶かして作ってるんですよ。
R:パート・ド・ベールみたいな…
WS:そうそう、パート・ド・ベール。
※パート・ド・ヴェール
パート・ド・ヴェールとは、なかなか耳慣れない用語かもしれません。
フランス語で「ガラスの練り粉」という意味です。
粉末にした色ガラスを、型に入れて焼成することによって鋳造することから、
この名前がついています。
もともとガラスの発祥の頃から伝わる技法ではあったのですが、
一時衰退して、その技法は忘れ去られてしまっていました。
しかし19世紀末に、フランスで技法が再発見され、
アール・ヌーヴォーの時代に大きく花開いたのです
WY:パート・ド・ベールだけど粉ではないみたいな・・・
WS:パート・ド・ベールの場合はパウダー状のやつを練ってあるでしょう? もうちょっと粒子の大きいやつを使うと、そういう透明感が出る。
WY:別に困った注文っていうより、「何でも言ってきて」って感じで…。
WS:でも、大した技術じゃないんだけど、そういうことの積み重ねで、全く違う作品が出来てくるんですよね。
WY:これでも窯もありますし、いろいろあるんですよ、この狭い中に。
R:窯はあの白いのですか?
WS:そう、あれは手作りので。電気窯。だから、大きさはいくらでも大きいの作れるんだけど、まあ、このスペースですから、あれが手頃かなと。
WS:あとここ、ここではサンドブラスト…
※サンドブラストとは極小の砂粒を高圧で吹き付け加工する技法

R:サンドブラストの砂ってどんな砂なんですか?
WS:「アルミナ」です。粒子もいろいろあるんですけど、これは120くらいですかね。吹き付けて、また回収して、戻して…。
R:じゃあ、ガラスの粒子も入ったりとかしてるんですかね、やっぱり?
WS:う〜ん…、ガラスの粒子はもっと細かいパウダー状になるんで、それは吸塵機で吸って、ガラスのパウダーだけ除去します。
R:トラットリア…看板で、あれもサンドブラストですか? 3mm削り込むっていう…。ホームページにあったんですけど…
WS:ああ、でもあれ時間の問題だから。うちは力弱いから…サンドブラスト専門にやってるところはあっという間にそれも…
R:そんなにパワーがあるんですか?
WY:あれも…
WS:うちのゴミ箱。(写真挿入)
R:ゴミ箱?!むちゃくちゃかっこいいですね…
WY:これ、打ち抜いてます…。だから3mmなんて、なんてことないんですよね。
WS:穴が結構、あの、個展見に来たひと…いけ花やってる先生かな?「…これいいなぁ…。花植えるのにいいなぁ…」とかなんとかいっちゃって。「いや、これはゴミ箱ですから」って(笑)。
R:ゴミ箱にするには、あまりにもかっこいいですよね。
R:サンドブラストする時の「マスキングをどうするか」とか書いてありましたが…?
WS:あれは、色が赤ですよね。エナメルっていって、ガラスに色をつけるのがあるんですよ。エナメルで書いてあるんですけど。
WY:そうですね。あの、ここに焼き見本が。
WS:こういう色んな色があるんですけど、こういうので、ステンドグラスの色ガラスを作るわけじゃないんだけど、それに絵を描いて…。普通、中世の絵というのは、グリザイユっていう、茶色とか黒とかの酸化鉄で書くんですけど、それに補色するのに、赤とかブルーとか、色をこう細かく入れていくような…。そういう時にエナメル…エマイユって言うんですけど、これすごく弱いんですよ、傷に。で、フィルム貼って、マスキングをカッターで切ると、みんなこう、パチパチパチってこう、跳ねて…。
R:サンドブラストってことじゃなく…?
WS:マスクを切る時に、カッターを当てられないっていう。ですから、こう、マスクをガラスに貼らない前に切っておいて、それをこう、フィルムで起こして…だからあの、普通の看板作るのと同じ方法でやったんですけど。
R:ポリカーボネートへサンドブラストをするやつがあると…?
WS:ポリカーボネートはねぇ、サンドブラストできないですよ。
R:硬いんですか?
WS:硬いんじゃなくって、研磨剤吹き付けても彫れないんですよ。弾力があるんで、いくら何十分研磨剤を吹き付けてっても変わらないんですよ。あんまりやると熱もって溶けるような感じ…樹脂なんで。だから、一応表面はザラっとはするんだけど、つや消しになるだけで、彫れはしない。
R:パーティションボードとかの素材に使われてますよね? 強いってことですか。
WS:強いけども、傷になるんで、建築屋はすごく・・・泣いてますよね。クリーニング入る前に、砂っていうか埃かぶって、現場のひとが拭いちゃったのが傷だらけになっちゃって、全部取り替えるとか。
R:金属とか木材とか可能なんですか?サンドブラストって。
WS:大丈夫ですね。
R:石でも?
WS:石はもう元々。
WY:墓石の名前なんかも…。
WS:石は簡単に削れますね。木は年輪のところが硬いんで、よく年輪をこう、浮き上がらせるのに結構使ったりしますよね。
R:積層ガラスについてなんですけど、床から天井まで積み上げるとしたら、どれくらい枚数が積みあがりますか?
WS:厚さによりますね。僕が使ってるのは8mm。8mmが一番効率的なんですよ。
R:デザインにしても加工にしてもですか?
WS:そう。加工にしても、8mmがリリーフ入れる大体限界の厚さなんですよね。それで薄ければ、8mmの下は6mmなんで、6mmになるとその分だけ枚数が増えますから…
WY:コバ処理も増えます(笑)。
WS:そういう加工とのバランスでいうと、8mmくらいが一番作業性はいいです。しかも厚いから、6mmよりは8mmのが…っていうふうに望まれますよね。なるべく厚くボリュームが出てくる感じで…
WY:5mmだと、横のラインが増えるんですよね。厚くなるのは8mmなんですけど、そうすると大きくなればなるほど、ステンの感じと8mmくらいがちょうどいいかなって…。
WY:5mmはちょっと薄すぎてね。コバ処理やなんかの時なんかに、割れたり…
R:積層するときは接着剤が乾いてから次のガラスを貼り合わせるという感じですか?
WS:そうですね、1枚1枚ですね。大体。
R:どのくらい時間かかるんですか?
WS:一枚接着するのに、硬化時間が2〜3分くらい。だけど、クリーンにして、接着剤を入れて、泡を入れないようにして、拭きとって、硬化して、って…。結構な時間がかかる。
R:1個作品作るのも1日がかりで?
WS:1日じゃ終わらない。それにね、一番大変なのはクリーン。はみ出た接着剤のクリーンが一番大変ですね。一応そういう紫外線硬化の接着剤ってのは、空気に触れてる部分は固まりにくいっていう性質があるんですけど、どうしてもこう、接着してても、接着剤が溜まりますよね? 溢れてきて。その溜まって、奥のほうが少し硬化するんですよ。それでどんどん重ねていくんで、拭いても拭いても全部下に流れていっちゃうから、どうしても溜まりができるところとかが、結構分厚くだんだん盛り上がってきて…。ティッシュで拭き取って、あとはもう全部やった後で水洗いしながら、削っていく。
WY:大きければ大きいほど大変なんですよ。何枚かのブロックにしたものをばちんと重ねればいいじゃないかってこともできないんですよね。紫外線の入り方が変わっちゃうんで。
WS:同じレベルの基準になるものが正確にあればいいんですけど、どうしてもたわみとか出ますから、そのブロック自体のたわみがぴったりってわけにいかないです。だから必ず厚さムラが出ちゃって…。接着剤は厚さムラが出ると、あとで接着剤自体にクラックが入ったりするんですよ。だからそういうのを避けるために、どうしても…一枚一枚。
WY:水垂れみたいになったり、縮んだり…どっかでムラになりますよ。
WS:曇るっていうか、ミミズがはいったような…
WY:うちはそういうの出してないですよ!(笑)。それはちゃんと確認して出してますから(笑)。
R:「季の膳」の「ガラスの滝」ってありましたよね?
WY:これがその模型なんですよ。これを作りました。
WY:一応いろいろ工夫して、水の量やどこに水を流すかも研究したんですけど、もし全然跳ねさせないっていうつもりだったら、こんなランダム(表面に凹凸のある)なのはお勧めはしなかったんですけど…。「滝は滝で」ってことだったんで、「これでどうでしょう」って言ったら…。
WS:いや違う、設計のひとが「ベコベコ出して」って言ったんだろ? で、「え〜〜〜?」って言って…。
WY:だったら、なだらかにすればいいだけのことなんで…。
WS:「そんなことしたら跳ねますよ」って言っててね。
WY:苦労しましたよね、これね。
R:水の量にもよるんですかね?ちょろちょろ…シャンパンタワーみたいに…。
WS:いや、ほんとね、あの、ぽたーん、ってやつでもね、打ちどころ悪いとね、ぴょーん、って飛ぶんですよ。
R:ここを歩くと裾がビチョビチョになってしまう感じなんですね。
WS:裾はビチャビチャにならないけど、石が濡れるっていう…。
WY:だから今、ちょっと現場を見に行ってこようかなとは思ってるんですけどね。
WY:以前ガラスの泉をやったんですけど、それはもう、全部夜中作業…チャペルでね。全面ガラス張りなんですよ。だから昼間だとどうしてもどっからでも光が入ってきて紫外線で接着剤がすぐ固まってしまうので…。
WS:あれはつらかったね。
WY:もうほんと、昼間、ぼーっとしちゃって何もできなくなっちゃうんで…。こちらはもう完全に、時間…。短期決戦でぱぱぱぱって行こうっていうことでやって、作ったんだよね。上までね。でもまあ、「まかせてくださいよ。若林が作りますから」って…(笑)。でもやっぱ綺麗だったよね? 綺麗だったと私も思うけど?
その2、いかがでしたか?
まさに日々挑戦。
すべてがオーダーメイドだからこそ、自分の想像とお客様の理想との間で最高のものを創造しようとする。限られた予算、材料、道具を駆使し工夫し新しいものを創造していく。だから日々挑戦なんですね。
さて次回は【その3:デザインのポイント】をお送りします。お楽しみに。 |
|